ハンジ「優しい風」

1: ◆uSEt4QqJNo 2016/09/05(月) 19:07:47 ID:ztQrNzoE




書類や資料がうずたかく積まれたその部屋ではカリカリとペンの走る音と、
何かぶつぶつと呟く声で満たされていた。
その音の発信源を四人の男女が心配そうに見守っている。


「ハンジ分隊長、もう三日になります。仮眠だけでは身体に障ります。休んでください」


モブリットのもう何度目かの要請にハンジは指紋で少し曇った眼鏡の奥から胡乱な目付きで彼を見据えた。


「モブリット、そこの資料を取ってくれないか?」



2: ◆uSEt4QqJNo 2016/09/05(月) 19:08:54 ID:ztQrNzoE



言葉が耳に入っていなかったのか、
入っていながらもなのかハンジはモブリットの声を聞いていなかった。


「ハンジ分隊長......」


こうなってしまったハンジを元に戻すのは中々容易ではない。
ハンジも頭の隅では彼らが心配してくれていることは理解している。
だが今、これを書き留めなければと躍起になっていた。

先の壁外調査でまた沢山の兵士が死んだ。途中で運悪く奇行種に遭遇してしまったのだ。
奇行種に出くわすと生存率は格段に下がる。どういう動きをするかわからないからだ。


3: ◆uSEt4QqJNo 2016/09/05(月) 19:13:46 ID:ztQrNzoE


そう、わからない。わからなければ対処に時間がかかる。わかれば生存率は上がる。

自分は巨人の研究者だ。巨人を知り尽くし、それを役立てなければならない。
これは自分の役目だ。ハンジはそう考え、とにかく少しでも生存率を上げる方法はないかと必死だった。


「ハンジ分隊長、お願いです。休んでください」


今度はハンジ班の紅一点、ニファから懇願される。その声にハンジはまたも胡乱気な目で見やる。

そこには心配そうな部下の顔、顔、顔、顔。四つ並んでいる。

ふと後ろの薄汚れた窓から射す光が何かに反射して目に入った。
そこに焦点を合わせるとそれはコップに汲まれた水だった。

はて、いつのまにここにあったのだろうと首を捻る。
そういえば気づくと井戸から汲みたてであろう冷たい水が傍らに置かれていたり、
食事も何故か突如現れたりしていた。


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