【モバマス】神谷奈緒「晴れは雨があってこそ」


2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/16(土) 23:08:57.42 ID:KS3A+iW2O

「神谷、ステップが遅れているぞ!」

「は、はいっ!」

事務所併設のレッスンフロア。次のライブにおけるメーン曲をバックに、シューズが床をこすり甲高い音を立てている。その場にはトレーナーと神谷奈緒の二人しかいなかった。最近なんだか調子の悪い奈緒は、トレーナーのフリーの時間に頼み込み、機を見てはこうして自主トレーニングに付き合ってもらっている。
奈緒が所属するユニット、トライアドプリムスの渋谷凛は力強いボーカルとステージパフォーマンスを、同じく北条加蓮は類まれなビジュアルとそれを活かすだけの表現力とにそれぞれ恵まれていた。どちらの領域も奈緒にはまだ遠く、ユニットでのライブが近づく中、同じユニットとして自分が足を引っ張らぬようせめて自分が他に比べて得意なダンスだけでも、と思い立ったのがきっかけである。
ただっ広いレッスンフロアは音を反響させ、自らのステップが刻む音がうっとおしい。奈緒は頭に入れた動きを繰り返す。でも何だか体が追いつかない。
普段ならできるターンが上手く決まらない。普段なら踏めるステップが踏めない。挙げ句の果て、振り付けのシフトで足がもつれ、転倒してしまう。ダンスレッスンフロアに鈍い衝撃が伝わった。



3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/16(土) 23:11:00.05 ID:KS3A+iW2O

手でリズムを取りながらカウントするトレーナーの動きが止まり、トレーナーは首を振りながら音楽の再生をストップさせる。当の奈緒本人はなぜ自分が転倒したのか全くわからず、床にへたりこんだままぽかんとしていた。
トレーナーは奈緒を気の毒そうに見つめ、宣告するような口調で言った。

「神谷、今日はもう帰れ」

「......え?」

唐突すぎる。訳が分からずに奈緒はつい聞きかえす。運動によってひどく自己主張してくる鼓動は、動揺によってもまた自分を顕示した。

「ダンスのキレが悪い、普段ではミスをしないようなところでミスをする、そして何より全体的に粗が目立つ。まるでダンスレッスンを受けて間もない人間のようだ」

「......!」

手厳しい、いや、ともすれば突き放しているとも取れる評価は反面、トレーナーが『普段の神谷奈緒』を見ていてくれている証拠だ。自分でも調子が悪いことはわかっている。自身よりも他人に見てもらう方が動きには客観的な判断を下すことが出来るし、それがトレーナーともなれば尚更だ。しかし、そこまで分かっていても、依然として奈緒は食い下がる。



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