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森きのこ!

1: ◆U2JymQTKKg 2018/06/17(日) 16:11:42.29 ID:qNud4UHwO

紗代子と歩のちょっとした伝奇もの。
短めです。


2: ◆U2JymQTKKg 2018/06/17(日) 16:12:39.39 ID:qNud4UHwO

「そういえば、こっちではイエオクリをしないんだったな」

耳慣れない言葉に足を止める。振り向くと先ほどまで隣を歩いていた歩さんが足を止めていた。

「すみません、上手く聞き取れなかったんですが……。イエオクリ、ですか?」

「ああ、あってるよ。イエオクリ」

歩さんは優しい口調で答えると顔を横に向けた。つられて私も歩さんの目線の先に目を向ける。

「……空き家、ですね。もう何年も誰も住んでいないみたいですけど」

木造の平屋建て。玄関前の電球は割れ、郵便受けは赤いペンキほとんど剥がれ落ちて日焼けした広告が突っ込まれている。玄関と門の間の小さなスペースには自己主張の激しい野草が青々と立ち塞がり、黄色いちょうちょが羽を休めている。

「アタシの地元だとさ、こういう家はイエオクリをするんだよ」

歩さんは道端のねこじゃらしを手に取り、くるくる回し始めた。



3: ◆U2JymQTKKg 2018/06/17(日) 16:13:42.11 ID:qNud4UHwO

「まず、敷地に生えた草を全部刈り取るんだ。庭も、玄関も、全部。次にドアと窓を全部外す。壊すんじゃなくてね」

「……全部、ですか?」

「ああ、玄関も勝手口も寝室も。もちろんトイレもだ。納屋があるならそのドアも外す。で、そのドアを全部家の中にいれて、一枚一枚重ならないように並べていく。廊下や部屋にね」

頭の中でその様子を想像する。床一面に広げられたドアと窓。まるで図書館の虫干しのようだ。

「面白いですね。でも、なんで床に並べるんですか?まるで床下から誰かが出てくるのを……。あ、そうか!氏神様ですね」

歩さんは首を横に振って、ねこじゃらしの茎を折った。