杏子「忘れない」


3 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/14(土) 21:08:11.00 Uqq2kZP30 1/65


月が綺麗な夜だった。
丁寧に舗装された道を、一人の少女が歩いていた。

燃えるような深紅の髪を持つその少女の左腕には、林檎が沢山詰まった紙袋が抱えられている。

その中から一つ、少女は林檎を取り出し口元へと運ぶ。

「..................」

無言で咀嚼する少女。
彼女の足音だけが、こつこつと暗闇に響く。

元スレ
杏子「忘れない」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1305374795/

4 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/14(土) 21:13:28.70 Uqq2kZP30 2/65


やがて、少女は開けた場所に出た。
頼りない、いくつかの電灯が照らすその場所は公園だった。

人の気配は無く、不気味な程の静寂に包まれている。

不意に、少女は立ち止まる。
何かが聞こえた。
少女が辺りを見回すと、丁度茂みの前。


そこに子猫がいた。

毛並みは酷く乱れていて、体躯も随分と痩せ細っている。
子猫は少女を見つめ絞り出すような声で、鳴く。

「..................はん」

少女は渇いた、けれども確かに笑い、子猫に近づいた。
その白く小さな手が、子猫の頭を優しく撫でる。

5 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/14(土) 21:15:01.27 Uqq2kZP30 3/65


「食うかい? ......なんてな。猫は林檎食うのか?」

少女の問い掛けに、子猫は小さく鳴いて答えた。
少女はそれにまたもや微笑みながら、子猫の頭を撫でる。

しかしその微笑みは、何処か悲なし気だった。

「......お前も......一人か......」

佐倉杏子には友達がいた。
何度もぶつかり、ようやく解り会えた。

孤独な彼女にとっては初めて『親友』と呼べるような、そんな存在になるはずだった。

そんな友達が杏子にはいた。


しかし、杏子は失った。
友達――美樹さやかを失った。
さやかは己の愛する人の為、文字通り命を燃やし尽くしたのだ。

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