男「お通しだらけの世界」店「お通し! お通し! お通し! お通し! お通し!」
男「ラーメンください。チャーシュー入りで」
店員「あいよー!」
店員「こちら、お通しの高菜盛り合わせとなりまーす!」
男「......どうも」
男(正直、高菜はあまり好きじゃないんだけどな......)モグモグ
男(なにか一冊、小説でも買っていこうかな)
男「これください」
書店員「かしこまりました」
書店員「こちら、お通しの小説となっております。『騎士団長皆殺し』です」
男「あの、これもう何度も読んだので結構です」
書店員「お通しですから」
男「......」
男「ボールペンください」
老人「あいよー」
老人「はい、お通しの消しゴム!」
男(......いらねえ)
男(これだけ買えば、当分買い出ししなくていいかな)
レジ店員「いらっしゃいませー!」
男「お願いします」ドサッ
レジ店員「お通しのトマトもカゴに入れさせていただきまーす!」ドサッ
男「トマトを調理する予定ないんだけど」
レジ店員「そこはほら、お通しッスから! 買ってもらわないと!」
男「はぁ......」
男(元々居酒屋がやってた“お通し”を、どこの業界もいい手だっていうんで真似して)
男(あっという間にこんなお通しだらけの世界が出来上がってしまった)
男(もちろん、タダではなく、料金はしっかり取られる)
男(注文してないのに、欲しくもない品を押し付けられて金を取られるというのは)
男(正直納得いかないが、みんな受け入れてるのだからしょうがない)
男(俺には世の中を変えてやろうなんて志も、そんな力もないのだから)