藤原肇「ナイトフィッシングイズグッド」


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/10(火) 02:31:42.38 ID:2O49l66V0

彼女がぷくうと頰を膨らませているのを見て、最近仕事に行かせてばかりでしばらく話せていなかったな、と俺はようやく思い出せた。


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/10(火) 02:34:13.42 ID:2O49l66V0

肇はとても、本当に、良い子である。

年頃の娘っ子だからと覚悟していたのに、一年ほどの付き合いの中でもとんと我が儘を言われたことがない。
その子が頰を膨らませて、「私は怒っています」と感情を露わにしているのだ。

俺は俺で、新卒で入った会社で、歳下の女の子との接し方なんて全く知らず、なんなら女の子との接し方もよくわかっていない。

つまるところ、初めての担当アイドルである彼女に、随分と許されてきたのである。

そこにきて彼女が初めて怒っている。それも俺に向かって。慌てないわけがない。


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/10(火) 02:35:16.98 ID:2O49l66V0

デスクの中にお菓子の一つでもないかとゴソゴソ漁って、ようやくミルク味の飴を発見した。

まあこれでも舐めてください、と献上したところ、俺の賄賂は彼女の口の中に納められた。

「お久しぶりですね」

「へい、一週間ってところぶりでしょうか」

思わず小物っぽい口調になった。
怒っていらっしゃるのは表情だけでわかっているけれど、そうか、語気も強くなるほどでしたか、と、俺は体をキュッと縮める。

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5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/10(火) 02:36:39.29 ID:2O49l66V0

十六歳の女の子に本気で萎縮する成人男性は、情け無いったらない。

しかし、なんとまあ嘆かわしいことに、この業界ではさして珍しくない光景である。
同僚たちが担当に叱られてるのを見て笑っていたが、自分で経験するのは初めてだったのだ。

なるほどこういう気分だったのか。

「一か月以上です」

彼女から飴をパキンと齧る音がした。

おや、そんなに経っていただろうか、とカレンダーを見た。
「目を逸らさないでください」と鋭いご指摘があった。


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