田中琴葉は遊泳する【ミリマス】


1 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:04:43.10 :FV7QCy/70

田中琴葉は遊泳する

どこで? もちろん白い砂浜と青い海のコントラスト、それに眩しい太陽のビーム差し込む湘南のビーチだ。

田中琴葉はトップアイドル(になる予定)なのだ。 市民プールなんて庶民的な場所に行く訳が無い。

また、スーパーアイドル(になる予定)の765プロのアイドルは事務所からプライベートでの水着着用を禁止されている。

それでは何故田中琴葉は遊泳するのか? 撮影があるからである。 今日は大親友の恵美とエレナと一緒に夏の海でグラビア撮影をしていた。

そして撮影を終えた今、自由時間を使って夏の海を満喫しているのである。

「恵美! エレナ! 早く行こう! せっかくの海なんだもん、泳がなきゃ損だよ!」

「何か今日テンション高くない?」

「コトハ元気だヨー」

「うん! だって...... 夏だもんっ!」

これは田中琴葉というのアイドルの一夏の思い出の記録である。


2 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:06:04.37 :FV7QCy/70

時は一週間前に遡る。

田中琴葉は両手に水着を持ちながら唸っていた。 これがその辺の汚いオッサンならば通報されていたが、田中琴葉は年頃の女の子なので水着をジロジロ眺めるのは普通のことである。

何故田中琴葉は水着を見ているのか、次の撮影で使うためである。 次の撮影では私物の水着を使って撮ることになっていたのだが、残念ながら田中琴葉はプライベートの水着を持っていなかった。

まさかスク水で撮影する訳にもいかないので、田中琴葉は大親友の恵美とエレナと共にこうしてお買い物に来ているのである。

悩みに悩んだ結果、田中琴葉は色とりどりの水着の中から二つにまで絞り込んでいた。

片方は無難な花柄、腰についたフリルが可愛らしいアイドルらしいもの。 もう片方も無難な水色ベースに田中琴葉のイメージカラーである緑のドットが入ったこれまたアイドルらしいもの。

どちらもとても可愛らしい水着である。 しかしふたつとも厳しい田中琴葉トーナメントを勝ち抜いてきた猛者、優柔不断の田中琴葉は最後の勝者を選べずかれこれ40分悩んでいたのだ(長すぎである)

田中琴葉は水着を体にあててそれを着た自分の姿をイメージする。 うん、大丈夫きっと似合っている。

そう、どちらもきっと自分に似合う。 だからこそ決められないのだ。


3 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:06:55.05 :FV7QCy/70

仕方がない。 こういう時は大親友の恵美とエレナを頼ろう。 こういう時にアドバイスをくれるのが大親友なのである。

キョロキョロと見回すと後ろからちょん と小突かれた。 大親友の恵美とエレナだ。

田中琴葉は早速田中琴葉トーナメントを勝ち抜いた水着ふたつを大親友の恵美とエレナに選んでもらおうとした。 が、恵美とエレナも手にそれぞれ水着を1つずつ持っていた。

なんと自分の水着を選び終えた彼女たちはわざわざ大親友の田中琴葉のために水着を選んでくれていたのだ!

嗚呼素晴らしき友情。 田中琴葉はありがたくそれを田中琴葉トーナメントスーパーシードに加え田中琴葉トーナメント決勝戦は4つ巴の大激戦となった。

しかし、大親友の恵美とエレナの選んだ水着はなんというか、その、ちょっぴり過激だった。

恵美の選んだ水着は黒色のまるで下着のようなビキニ、胸元のレースがなんともいらやしい。 普通の服選びであれば黒はシックで無難な優等生なのだが、水着界隈において黒は破天荒オチャメガールである。

エレナが選んだ水着は露出度高めのまるでサンバ衣装のような水着。 水着の端に黄色のヒラヒラが沢山ついていて、ひとつくらい錦糸卵が混じっていてもバレなさそうである。


4 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:07:48.63 :FV7QCy/70

田中琴葉は躊躇した。 いくら大親友のオススメとはいえ流石にこの水着はないだろう。

しかし、それでも強く断れないのが田中琴葉である。 一応この水着も候補に入れる。 もしかしたら自分には自分でも知らないセクシ-が隠れているかもしれないし。

さて困った。 この4つ巴の戦いはどうしてくれようか、1vs1の決戦ならまだ楽だった。 これからは4つの水着によるバトルロイヤルである。 マイティソーである。

ただ何時までも悩んでいる訳にもいかない。 決断の時は今! 田中琴葉はやる時はやる女だと証明するのだ!

「うん決めた。 私はこの緑のドット柄の水着にする」

「えー、ワタシの選んだ水着着てくれないノ......」

前言撤回。 まだ検討の余地有。

「そんなこと言っちゃダメだってエレナ、琴葉また迷っちゃうじゃん」

「あっ、ゴメンネ? 水着はコトハが着たいの選んだらいいヨー」

そう言われても田中琴葉トーナメント決勝戦マイティソーバトルロイヤルは再び開幕してしまったのだ。 そう簡単に決める訳にはいかない。


5 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:08:32.70 :FV7QCy/70

「うん、それじゃあエレナの選んでくれたこれにする」

琴葉は腰に錦糸卵が付いてる水着に決めたらしい。

「そっか...... それにするんだ......」

そう小声で呟くは恵美。 自分の趣味を押し付ける訳にはいかないが、それでも自分の選んだ水着を大親友の田中琴葉に着て欲しかったのが本音。

そんな言えないフローズン・ワードをちゃんと感じ取ってあげられるのが大親友である。 田中琴葉はすぐに黒レースを持ち直し。

「あ、あー でもー こっちもいいかもな~」

と演劇部で鍛えた完璧な演技を見せつける。

「あっ! いいよいいよ! 気なんて使わなくたって」

女子同士ってこういう空気あるよね。

無理なんてしてない、と黒レースと錦糸卵をレジに持っていこうとする田中琴葉だったが、よく見るとこのふたつ...... 中々のお値段だ。

黒レースはともかく、こんな布面積の少ない錦糸卵がこんなに高いのが解せない。 もしかしたらこの水着のヒラヒラは錦糸卵じゃないのかもしれない。


6 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:09:23.69 :FV7QCy/70

お財布の中身を確認する田中琴葉、中には高校生らしい慎ましい枚数のお札が入っていた。

やはりアイスの買いすぎか、この前『ありがとうサンキューアイスキャンペーン』と称してアイスを39個ドカ食いしたのがいけなかったのか......(ちなみにその翌日お腹を壊した)

チラリと見やると花柄の水着の値札に見える『SALE』の文字(多分春日未来だったら読めてない)

田中琴葉の中で葛藤が起きる。 いくらお財布が寂しいとはいえ(未来の)トップアイドルである田中琴葉がセール品を身に付けて撮影などしていいのか......

とは言え手持ちのお金では黒レースか錦糸卵、どちらかひとつしか買えず大親友どちらかの顔を曇らせてしまう......

田中琴葉18歳、ここに来て人生の岐路に立たされてしまった! ちなみにこんなどうでもいいことで岐路に立つ田中琴葉の人生はさぞかし枝分かれしていると思われる。

悩む田中琴葉。 滴る汗。 回る時計。 飽きてきて欠伸する大親友。 お腹すいた。 エレナのSSRはよ。

「あっ、これ琴葉に似合ってるじゃん!」

「ホントだ! これにしたらいいヨっ!」

結局最初に決めた奴にしました。


7 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:10:11.19 :FV7QCy/70

ここまでが水着を選ぶまでのお話、この葛藤(?)を乗り越え田中琴葉はこうして海で遊んでいるのだ!

海と言えば何を思い浮かべるだろうか、ここで『無人島』とか答えた人は島流しである。

そう! 海と言えばスイカ割りである! もしかしたらスイカ割りのルールを知らない人が居るかもしれないので、念のためにルールを説明しておこう!

スイカ割りとは、手に棒を持ち目隠しをして前が見えない状態で(もちろん後ろも横も見えないよ)暗中模索しながらスイカを力の限り叩き割る田中琴葉とは無縁の暴力的なゲームである。

ちなみにスイカと間違えてそこら辺のビーチウェイの頭を割ってはいけない。 スイカもビーチウェイの頭も割ったら赤いものが飛び出すがあくまでこのゲームはスイカを割るゲームである。

スイカ割りなどという暴力的なゲームは本来心優しい田中琴葉とは無縁のはずであるが、ビーチに来てテンション最高潮の田中琴葉は家から持参した棒とアイマスクを持って「スイカ! 割ろっ!」と大親友に提案した。(スイカは海の家で買った)

さてアイマスクを着用し精神を落ち着かせる。 なんてことは無い、さっき目隠しする前にスイカの位置は確認した。 田中琴葉はダンスをやっているのだこのくらい余裕

「あっスタートする前に10回クルクル回ってねー」

そんなローカルルール知らなかった。


8 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:10:39.80 :FV7QCy/70

だがルールはルールなので田中琴葉はクルクル回る。 多分田中琴葉が実際にクルクル回ってるところを見たら大爆笑してしまうと思う。

10回クルクルするころには田中琴葉はすっかり目が回ってしまい、本当は9回しか回ってないのにも関わらずノロノロスタートした。

「右! 右!」

「そのまままっすぐだヨっ!」

嗚呼なんということだ、大親友であるはずのふたりの意見が違うではないか!

ふたりとも田中琴葉がちゃんとスイカを割れるよう腹の底から指示を飛ばしてるはずである。 それなのに意見が割れてしまうとは......

不味い、このままでは意見が割れてそのまま3人の仲まで割れてしまうかもしれない。 割れるのはスイカとビーチウェイの頭だけで十分だ。

田中琴葉は必死に平静を取り戻しスイカがあった方へ向かう。 後ろから大親友の声が聞こえるような気がするが余計なことを考えている場合ではない。

思いきり振りかぶって......

「めぇぇぇぇーんっ!」


9 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:11:18.38 :FV7QCy/70

田中琴葉の振りかぶった棒はスイカにもビーチウェイの頭にも当たることはなく、虚空を過ぎ去っていくのみだった。

「悔しい~! もう一回! もう一回やらせて!」

その後田中琴葉は3回挑戦した。 もちろん失敗した。 その後エレナが一回で成功させた。

「もう...... エレナ1回で成功させちゃうなんて......」

「アハハっ、簡単だったネっ」

「わ、私だってもう一回やってたら成功してたもん!」

「ほんとにぃ~? スイカもう一個買ってこよっか?」

「ま、まぁスイカ食べ過ぎたらお腹壊すかもしれないし、今日はこのくらいで」

砂浜で3人並んで割ったスイカをのんびり食べる。 平日の夕方になるとビーチは驚くほど人影が少なくなり、そこはプライベートビーチの様相を呈していた。


10 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:12:15.35 :FV7QCy/70

真っ赤な夕日に照らされ黄昏れる恵美とエレナと田中琴葉。

今日は本当に楽しい1日だった。 昨日も本当に楽しかった。 明日もきっと楽しくなる。

だけどこんな楽しい日がこれから先永遠に続くかどうかわからない。

大親友であるはずの3人がいつか1人欠けて、2人だけで頑張らなくてはいけない日が来るかもしれない。

その時、自分たちは本当に頑張れるのだろうか、心折れてしまわないだろうか。

それでも、だからこそ、3人で過ごす時間は貴重で、かけがえのない大切な宝物なのである。

なんて、柄にもないセンチメンタルなことを考えてしまうのはきっとこの静かな細波のせい。

「また...... 絶対来ようね」

誰ともなく呟くその言葉、でもきっと3人とも同じことを思って

「え? 来週も水着の撮影あるから海にはまた来るよ?」

忘れていた。 田中琴葉とはこういう女であった。


お わ り


11 :◆KakafR9KkQ :2017/10/05(木) 22:12:42.03 :FV7QCy/70

読んでくれた人ありがとうございました。


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