【モバマス】P「秋波に千鳥」


1: ◆77.oQo7m9oqt 2017/09/17(日)15:49:11 ID:OWT

独自設定あり。
よろしくお願いします。



2: ◆77.oQo7m9oqt 2017/09/17(日)15:49:59 ID:OWT


────やめてください。

そう言って手を振りほどかれたのは、松本沙理奈にとって初めての経験だった。

自分の魅力は自身でしっかり理解していた。その顔が区切りとして美人の枠に入ることも。その身体が異性を惹きつけることも。

だから、男性との初対面では積極的に距離を詰めていくことが合理的なやり方だと思っていた。実際、それは彼と出会うまでは有効だったのに。

よろしくね、と組みにいった腕は、気難しそうな声と顔とに弾かれた。

不愉快だった。というわけではなく、単に驚いたのだ。今までにはないことだったから。

アイドルになった沙理奈とそのプロデューサーとの出会いは、彼女にとって未知の展開から始まった。


3: ◆77.oQo7m9oqt 2017/09/17(日)15:50:57 ID:OWT


*

冴えない、というと語弊がある。端正、というのはやや言い過ぎ。うまく言い表す言葉の見つからない顔をしている。あえて言うなら『実直』という単語をそのまま顔にしてみたような。

体型はスーツで隠れていて、外観では細身だということしかわからない。襟元も袖口もかっちりと着崩していないあたりもやはり『実直』だ。
身長は低くもなく高くもなく。

休憩スペースとプロデューサーのための事務スペースとはパーティションで荒く区切られている。シンプルな黒張りのソファに体重を預けながら、その隙間から彼の横顔を覗いていた。

キーボードを打つ手は淀みなく早い。画面に固定されている目から手慣れていることがわかる。

「......なんですか。ジロジロ見て」

真一文字に結んでいた彼の口が不意に動いた。

「え? ......あ、気付いてたの」

「気付かないわけないでしょうが」

むすっとした顔で、むっつりした声でプロデューサーは応えた。
一見すると不機嫌にしか見えないその様子だが何も怒っているわけではないらしい。不本意だった初対面からひと月ほどが経って、沙理奈にもそれぐらいは分かるようになった。


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