百合子「愚者の私に出来ること」


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/15(金) 18:45:09.04 ID:GkhDt2Oq0

初めから答えなんて見えていたのに、それでも何かが変わることを私は期待していたのだろうか。

後悔先に立たず。覆水盆に返らず。そんな風に、今の私みたいな思いをしてきたであろう人々が零したであろう言葉はことわざとして現代まで残っているというのに。

賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。かの鉄血宰相ビスマルクはそう言った。その言葉を証明するように今の私は、なるほどこれが後悔というもので、先人の言葉たちはいつだって真理を指し示していたんだなんて、精一杯に心の中で強がりながら肩をすぼめて、横に長く伸びた座席の隅っこに腰を下ろしている。

がやがやと、どこに耳を傾けなくたって真夏の蝉時雨にも似た勢いで鼓膜をめがけて飛び込んでくる言葉の洪水がただ煩わしい。

ちびちびと自分で持ってきたドリンクバーに口をつけながら、私はぼんやりとそんな思いを抱きながら自分の周囲にいる集団を、そして似たような一塊になって三月のファミレスに集っている集団をぐるりと一望してみる。心なしか、家族連れや私服を着ている人たちよりも、どこかの制服に身を包んだ人の方が多いようにも見えた。


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/15(金) 18:46:46.27 ID:GkhDt2Oq0

――まあ、私もその一部なのだけど。

どうにも収まりの悪い胸元のリボンタイを正しながら、この酩酊にも似た盛り上がりに水を差さないようにそっと溜息を一つ。こんな時期に、しかも真っ昼間からファミレスにたむろしている制服の集団と言えば、何をしているかなんて答えは火を見るより明らかだ。

部活の送別会。

まあ、実際は名前が違ったり事情も色々違うのだろうけど、雑にひとくくりにしてしまえば大方そんなものだろう。

この時期になればどこの部活も三年生は現役を退いていて、それでも部活のことが忘れられない一部が一足先に迎えた春休みを利用して、遊びに来る感覚で顔を出すのが通例みたいなものだ。とりわけ運動部なんかはそれが顕著で、女バドは未だに部活に来ている三年生がいるのだと、どこかで小耳に挟んだことがある。

――じゃあ、私が籍を置いている美術部がどうかと聞かれると。

「先輩たちはもう受験終わったんですよね?」
「そもそも受かってるかわかんないよね」
「えー、だめじゃないですか、それじゃ」

何が面白かったのか、そんな三年生と二年生のやりとりにどっ、と笑いが巻き起こる。

その後、三年生は各々第一志望として受けていた高校の名前をつらつらと挙げていったけれど、誰もどれも似たようなラインナップで、面白みがあるかと言われれば正直なところ首をひねらざるを得ない。

私の隣の席に座っている咲洲さんというらしい同級生が、この辺りでよく知られている模試の資料に書かれた偏差値一覧のど真ん中にある高校の名前を挙げる。

ああ。

こういう流れか、と、わかってはいたけどいざ自分の所にお鉢が回ってくれば、憂鬱にならざるを得ないわけで。

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