佐城雪美「今なお暮れつつある日に」

2: ◆K5gei8GTyk:2017/07/15(土) 20:31:15.84 :H6bsipiu0

私が小さい頃から飼っていた猫が寿命で失くなってしまった日の晩に、夢をみた。

内容は、一両しかない電車に揺られてどこかへ向かうというだけのもので、私は同じ夢を以前に二回ほどみたことがある。


3: ◆K5gei8GTyk:2017/07/15(土) 20:32:44.59 :H6bsipiu0

一度目は私がまだ小学生だった頃、大好きだったキャラクターのプリントが施された食器を落として割ってしまった晩だった。

たしか私はひどく泣いた覚えがある。

失ってしまったものはもう元には戻らないことを知った。


二度目は中学生だった頃で、大きな舞台でのライブで、緊張して曲の歌詞が飛んでしまった時のことだった。

ファンはそれでも盛り上がってくれたし、事務所の皆は仕方ないと言ってくれたけど、ライブが終わって自宅に帰った後、私は自分の部屋で一人、涙を零した。


泣き疲れて眠った先には、電車があった。


4: ◆K5gei8GTyk:2017/07/15(土) 20:33:35.70 :H6bsipiu0

だから私が周りを見渡して、私以外に誰一人として乗客のいない空間に一人揺られているのを確認して、すぐに夢だと気付けた。

そのあとに、飼い猫が遠くへ旅立ってしまったことを思い出した。


5: ◆K5gei8GTyk:2017/07/15(土) 20:34:32.29 :H6bsipiu0

陽は沈んでいた。

とはいえ完全に暗闇とまではいかなくて、仄明るい空と深い木々ばかりが車窓を流れていた。

私はそれをぼうっと眺めたり、車内を歩き回るだけで、特別何か考えたことといえば、猫に会いたいというくらいだった。

それも悲しさや寂しさに端を発するものではなくて、ただ単に私の人生にはどの局面にも猫がいたというだけで、今はいないというその違和感を埋めてしまいたかった。


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