エルヴィン・スミス「花の香り」

1: ◆uSEt4QqJNo 2016/10/14(金) 23:13:00 ID:gX4eXeBI




調査兵団団長室でエルヴィンの手伝いをしていたミケはすんっと鼻を鳴らした。
開け放れた窓から仄かに甘い香りが鼻孔を抜ける。


「そろそろだな」

「突然なんだ、ミケ」


今まで無言で書類を捌いていた大柄な男が不意に鼻を鳴らしたと思えば主語も付けずに同意を求めてきた。
なんのことだかさっぱりわからないエルヴィンは質問を返事にするしかなかった。



2: ◆uSEt4QqJNo 2016/10/14(金) 23:19:25 ID:gX4eXeBI



「桂花が咲き始めている」

「? それがどうしたんだ?」


問いに対しての明確な答えではなかった。

桂花。一般的には金木犀と呼ばれるオレンジ色の小さな花をいくつも咲かせ、甘い香りを強く発する植物のことを指す。
だが銀木犀と称する白色の花で香りの弱いものなど他にも幾つかあり、それらは分類上全て桂花と呼ばれていた。

ミケの言う桂花がどれをを指しているのかわからないが甘い香りで総称の桂花と示したのだろう。
強い香りならば金木犀なのかもしれない。

それが咲くからなんだと言うのか、エルヴィンはわからずやはり質問をした。


「わからないか?」


いたずらっ子のような笑顔でそう返され、エルヴィンはわからないと首を振る。


3: ◆uSEt4QqJNo 2016/10/14(金) 23:20:42 ID:gX4eXeBI



「お前の誕生日だ」


そういえば、と窓の外に目をやった。
そこにオレンジ色の花はまだない。どこの桂花を嗅いだのだろうと少し悩む。

ミケのことだから遠くの花の香りも嗅げるのだろうとすぐに思い、目を室内に戻した。


「......随分と回りくどいお知らせだな」

「そうか?」


忘れている方がおかしいとばかりの返事だ。
「花の香りで思い出せればいいかと思ってな」と取って付けたような理由を述べ、また書類を捌く作業へ戻っていった。


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